■中小企業省力化投資補助金とは
2024年度に実施される補助金の中で、とくに注目を集めているのが今年新設された中小企業省力化投資補助金(省力化補助金)です。
省力化補助金とは、中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするために、人手不足に悩む中小企業等に対して 、省力化投資を支援する補助金です。
IoT 、ロボットなどの人手不足解消に効果がある汎用製品を導入することで、中小企業等の付加価値額や生産性向上を図り 、賃上げにつなげることを目的としています。
これまでも中小企業庁では「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」などが実施されていますが、人手不足の解消にフォーカスした初の補助金となります。
(出典:経済産業省関係令和5年度補正予算の概要)
■省力化補助金の背景
少子高齢化による人手不足があらゆる業界で課題となっていて、特に中小企業になるほど問題が深刻化しています。
中小企業庁が公表しているデータによると、製造業、建設業、卸売業、小売業、サービス業のすべての産業において人手不足感が強まっている傾向にあります。
こうした中、政府は、人手不足の解消に向けて企業の省人化・省力化支援など「官民挙げて支援を図る」と方針を出しており、省力化補助金制度が新たに確立されたと推察されます。
■省力化補助金の補助率・補助額
省力化補助金は従業員数に応じて補助上限金額が変動します。
以下の表をみてみましょう。
従業員数が多いと導入する省力化機器の数も増えるため、補助金額の上限が上がる仕組みになっていると思われます。
また、省力化補助金では賃上げ要件を達成した場合、補助金額が( )内の値に引き上げられます。
■省力化補助金の補助対象者
省力化補助金は中小企業を対象としているため、従業員5名以下の小規模事業者から21名以上の企業まで幅広く使える補助金です。
業種では、建設業、製造業、物流・倉庫業、卸売業、小売業、宿泊業、飲食業、介護業などが主な対象となります。
組織形態については、個人事業主や企業のほか、企業組合なども対象となる予定です。
「ものづくり補助金」に比べると補助金額も‘手頃感’がありますので、人手不足に悩む中小企業にとって、うってつけの補助金となるのではないでしょうか。
省力化補助金は、人手不足を解消するために省力化設備を導入することを支援するための補助金です。
その結果、生産性向上や賃上げにつながることを目的としています。
従って、人員削減のために省力化補助金を利用することはできません。
■補助対象経費
省力化補助金の対象となる経費は以下の2つです。
1.製品本体価格
2.導入に要する経費(導入経費)
省力化補助金では「2.導入経費」も補助の対象となります。
導入経費とは省力化製品の設置作業や運搬費、動作確認の費用、マスタ設定等の費用です。
導入経費は補助事業実施期間中(最大一年間程度)に生じた費用が補助対象となるとされています。
一方、保守サポートに要する費用については、補助対象外となります。
■申請枠
省力化補助金の申請枠については、令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)では「省力化投資補助枠(カタログ型)」という申請類型のみが公表されています。
ここで注目すべきは「カタログ型」ということばです。
「カタログ」がどのようなものかはまだ発表されていませんが、省力化補助金では、事業者は、「カタログ」に登録された省力化製品を選択して導入する方式が採用されます。
「カタログ」には、IoT やロボットなど人手不足解消に効果がある汎用製品が掲載されています。
■汎用製品とは
省力化補助金でもうひとつのポイントとなるのが、「カタログ」に掲載される省力化製品は汎用製品でなければならないということです。
つまり、オーダーメイド製品は「カタログ」に掲載することができず、事業者側は選択できません。
自社の事業に特化した設備・機器を導入したい事業者は「ものづくり補助金」を検討されることをおすすめします。
では、なぜ汎用製品に限定されるのでしょうか?
省力化補助金の目的に「簡易で即効性がある省力化投資を促進」とありますので、納期がかかるオーダーメイド製品は趣旨から外れてしまうためです。
「採択されたらすぐに注文、パパッと納品して事業完了。できるだけ早く人手不足解消の効果が出てほしい。」といった感じではないでしょうか。
なお、中小企業庁発表の資料によると、カタログ登録件数は3,000件を想定しているとのことです。
■スケジュール
省力化補助金の公募スケジュールはどのようになっているのでしょうか。
コラム投稿時点の情報では、公募スケジュールや予定採択数は以下のとおりです。
・2024年4月より申請開始
・公募回は2ヵ月に1回
・2026年9月までの全 15 回(30 ヶ月間)の公募を予定
・1回の公募で8000 社を採択(×15回で計 12 万件)
ただし、中小企業庁発表の資料では、上記は「あくまでも仮定であり、実際には申請数等の状況により今後判断となる」としています。
■予算と規模
令和5 年度補正・令和 6 年度当初予算案によると、省力化補助金の予算は1,000 億円で、既存基金の活用を含めると総額 5,000 億円規模となっています。
事務局に委託する運営にかかる運営費などで500億円ほど見積もるとして、補助事業者に交付する補助金は4,500億円ほどでしょうか。
4,500億円を予定採択数12万件で割ると375万円です。
つまり、採択1件あたりの補助金額を350~400万円と見込んでいることが分かります。
■省力化機器のメーカー・販売店が準備しておくこと5選
省力化補助金はまもなく公募が始まります。
2026年9月までの実施が予定されていますが、公募回が早いほうが、採択率が高くなることも考えられます。
省力化機器のメーカーや販売店はスタートダッシュをきれるよう以下の5つを準備しておきましょう。
1.省力化補助金の制度を理解する
省力化補助金は省力化支援事業者(メーカーや販売店)と補助事業者(エンドユーザー)が申請~補助金交付まで協力して行う形式です。
支援事業者には、販売するだけでなく導入後のサポートまで求められます。
補助金は「返さなくてもよいお金」であることは事実なのですが、財源が税金なので厳格なルールが適用されます。
補助事業者が「もらえるお金」と安易な認識でいるとトラブルの元にもなります。
また、不正や虚偽を伴う申請すると、補助金が交付されたとしても取消し・返還の対象となります。
そのようなことが起きないよう、クライアントに対して補助金がどういう制度なのかをきちんと説明ができるようにしておきましょう。
補助金はメリットばかりではありません。
申請に手間がかかることや補助金交付後も手続きがあること、厳しいルールがあることなど支援事業者自身が制度と仕組みを理解したうえで、省力化補助金を活用することが大切です。
2.実施体制を構築する
省力化補助金が「自社の商品を拡販できる絶好のチャンス」といって、営業活動に全振りしてはいけません。
中小企業庁発表の資料には、「支援事業者の登録申請書には、機器の導入支援・保守を行う体制を記す欄を設ける」と記載がありますので、「売りっぱなし」では支援事業者とは認めてくれません。
導入支援と保守サポート体制を取れることが重要になります。
営業マンが獲ってきた案件を集約する担当者や機器を手配する担当者なども必要です。
自社とクライアント双方にとって有益な実施体制を構築するようにしましょう。
3.「カタログ」を登録するための準備
自社の省力化機器を「カタログ」に登録するための準備を始めましょう。
中小企業庁の資料には「機器の省力化効果・価格・投資回収年数を記す欄を設ける」とあります。
「機器を導入することによる省力化の効果」が最も重要ですが、「機器を導入した費用を何年で回収できるか」も問われます。
自社の既存カタログでは不十分かもしれません。
機器の省力化効果や投資回収年数をあらかじめ算出しておくことをおすすめします。
4.販売見込み先のリストアップ
スタートダッシュで他社と差をつけるためには、販売見込み先をリストアップしておくことが重要です。
見込み先であるクライアントには、当然、他の支援事業者も営業をかけます。ライバルはたくさんいます。
自社がクライアントにとって「省力化補助金の営業第1号」となるよう、販売見込み先をリストアップして、いつでも営業をかけられる準備をしてください。
5.営業ツールの作成
営業マンが営業する際に必要な資料を準備しましょう。
機器の説明だけでなく、省力化補助金の制度や仕組みをしっかりと説明できる資料が好ましいです。
「中身が充実した資料を元に受けた説明」だとクライアントに安心感が生まれるでしょう。
補助金を初めて活用するクライアントであればなおさらです。
他社に差をつけることのできる資料の作成を心掛けましょう。
■省力化補助金のまとめ
2024年度から始まる省力化補助金は省力機器のメーカー・販売店は自社の製品を拡販するチャンスです。
省力化を考えている事業者にとっても非常に魅力のある補助金です。
第1回公募から申請が殺到すること予想されます。
スタートダッシュできるよう早めの準備を進めましょう。
省力化補助金サポートオフィスでは、省力化補助金の申請サポートを行っています。
省力化支援事業者の販売店登録・カタログ登録やクライアントの申請サポート、さらには補助金交付後のアフターフォローまで迅速かつ丁寧にトータルサポートいたします。
「省力化補助金を活用したいけど、制度がよく分からない。」「クライアントへの説明の仕方がわからない」などのお悩みの抱えているみなさま、そのお悩みを省力化補助金サポートオフィスがすべて解決いたします。
初回の相談は無料です。省力化補助金を検討されている方はどのような些細なこともお気軽にご相談ください。